著者:吉本ばなな
出版元:幻冬舎
吉本ばななは癒しの力を持った
作家だと思う。
中学生の頃に家の本棚にあったキッチンやTUGUMI、白河夜船を読んだ。
その頃の作品はとても文章がうまく、
中学生の自分にも自然と物語が理解できる
とても自然なお話として小説として、入ってきた。
しかし、ある時を境に受ける印象が変わった。
異世界に引きずり込む、日常とズレた世界を描くおばけや夢の世界が頻出する。
その世界は変わらないのだけれど、何かが決定的に変わった。
物語の芯というか、強度というか、何か強いものを
こちらに差し出してくるようになった。
ひとつひとつの言葉の中に込められた生を、生きることを肯定し、
だめな部分も赦し、読んでいて活力が湧いて来るような、
そんな文章に明らかに変わった。
最近の著作では特にその傾向が顕著で、絶妙に平易な表現で描かれた人間讃歌、
生きていていいんだという肯定感をバシバシと送ってきます。
読んでいて元気が出る文章と、描かれている世界にスッと入っていける簡潔な文章。
この本こそ中学生や高校生の頃、どうして生きていけばいいのか途方にくれていた
自分自身に読ませたい。
ファンタジーの力、物語の力には読む人を癒やす力がある。
自分とは違う世界線で生きる人々をありありと想像できること。
自分の中に現実とは違う世界の住人たちを住まわせること。
そこから湧き出してくる想像力、夢の中に行ってまた戻ること。
これが生きていく上で大切なことだと改めて感じさせてくれる一冊です。
この吹上奇譚はシリーズとして続いていくようです。
この物語の住人たちがこの後どんなふうに動いていくのか次巻も楽しみです。
それでは。
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